書 評   


  お手もとのデジカメで写真測量ができる―――高価な専用の実体図化機、難解な最小二乗法、複雑な数値計算、 といった世界のものだと思っていた私たちには驚くべきことである。
  ある講演会で著者も語っていたが、計算機の能力が向上し、ソフトウェアの品質も高度になるにつれて、
かつてはハードウェアの精密さや撮影仕様を厳しく限定することによって精度を保っていた 「写真測量」の技術が、大きくソフトウェアの領域にシフトしてきた結果、撮影方法のしばりが 緩くなってきた効果だといえよう。
  航空測量、すなわち垂直撮影成果を用いた地形測量に限らず、 いわゆる「近接写真測量」の分野に属するさまざまな事例が紹介されている。
  利用者の裾野が広がることによって、写真測量の分野も、今後また、これまでとは違った発想と 価値観で新たな展開が期待されるところである。日進月歩の技術分野であるため、本になった頃にはまた、新しい技術が生まれているかもしれない。
  それはそれで、本書が、今の瞬間(・・といっても、初版発行の数ヵ月前?)の技術動向を示しているのだといえる。次は、読者諸氏が、続刊を書く番である。

  ps. 計画停電の初日、時間帯を気にしながらこの文章を書いている。デジタルデータの素晴らしさと脆さとを同時に実感しているところである。 写真測量技術を、もっともっと社会に役立てていきたいと、強く感じたしだいである。                             

                                                      (大山 容一)      


【 月 刊 「測 量」 8月号より 】 
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